今回は単位変換について考えましょう。  材料力学のみならず、工学系では単位変換が頻繁に出てきます。客先でいきなり聞かれ て答えられないのも恥でしょうから説明ぐらいはできるようにしておきたいものです。  決して難しくはありません。 単純に分子、分母の単位をそれぞれ目的の単位に置き換え ていくだけです。  例えば、 ●昔の気圧の単位で使われていた水銀柱760mmHgは何Paか?  水銀の比重は13.6g/ccです。そして、単位面積の1m^2を考えます。 水銀の密度(Kg/m^3)は、比重が水の13.6倍ですから、    13.6×1000Kg/m^3=13600Kg/m^3  です。 一方、1m^2×760mmの水銀の体積は0.76m^3であり、これを乗すれば、   0.76m^3×13600Kg/m^3=10336Kg で、この質量が1m^2に掛かっているわけです。  1Kgf=9.8Nですので、N表示すると、10336kgf×9.8N/Kgf=101292.8N、 圧力のPa表記では=101292.8Pa≒1.013×10^5Paです。  気圧の場合、ヘクトパスカル単位(hPa=100Pa)で表記しますので   1気圧=760mmHg≒1013hPa  となります。 ●1PS(仏馬力)は何Wか?  1PSの定義は、「1秒間につき75(Kgf)の重量を1メートル動かすときの 仕事(75 Kgf・m/s)」 です。  先ず、KgfをN表記にすると、 9.80665N/Kgf×75Kgf=735.5N N・mは「1Nの力が力の方向に物体を1メートル動かすときの仕事」 の定義からJ単位となり、結局   1PS=735.5N・m/S=735.5J/S=735.5W となります。 ●1psiは何Paか?  psiは平方インチ当たり、1ポンドの力が掛かった時の圧力です。 つまり、1psi =1lbf/in^2  です。 1lbf =0.4536Kgf =4.4483N 1in^2 =25.4^2×10^-6m^2 =6.4516×10^-4m^2 それぞれの分子・分母の単位を置き換えれば  1psi=4.4483N/6.4516×10^-4m^2 =6894.9Pa となります。 ●熱伝導率 1(Kcal/m・h・℃)は何(W/m・K)か?  日本の計量単位令では、1cal=4.184Jです。(珍しく端数はない) 1Kcal/h=4184J/3600S=1.1622J/S J/S=Wであり、温度差は℃とKで同じですから 1(Kcal/m・h・℃)=1.1622J/S・m・K =1.1622W/m・K となります。 《おまけ》爆発物の単位に使われるTNTトンとは1トンのTNT火薬を爆発させた時のエネ ルギーで10^9カロリー=4.184 GJのことです。